ひきこもりクエスト

ひきこもりが何と戦ってるかって?自分の中にいる怪物だよ

心を抉られる自己啓発本『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください』【感想】

スポンサーリンク

もっさりした女子のイラストに味がある表紙

 

アラ古希の学者先生による、低スペック女子のための人生指南書。


馬鹿ブス貧乏がパワーワードすぎて励まされているのかdisられているのかわからなくなりますが、ジェーン・スーさんの推薦文いわく「自己憐憫に唾棄したい人向け」。


女性に夢を見させて金儲けしようという魂胆がないぶん誠実です。

 

ここでいう馬鹿ブス貧乏は「一を聞いて一を知るのがやっとで努力しないとゴミになる脳みそしかなく、女優やモデルになれる美貌もなく、働かずに生きていける金もない」女性のこと。


世の中の97%の女性を指します。


「普通」や「平凡」といったほうが妥当ですが、一億総中流時代は過去の話。


ごくわずかな勝ち組を除く大多数が負け組となったいま、一億総馬鹿ブス貧乏に降格されたといってもいいくらいです。


身分制度に代わる能力主義は学歴・業績を基準とした新たな格差を生み、貧困は努力不足で切り捨てられ、新たな地獄が誕生しました。

 

ガチ底辺から見れば著者の藤森さんは馬鹿でもブスでも貧乏でもないのですが、「他人があまり信用できない」うえに反出生主義なあたり、失礼ながらだいぶこじらせててこっち寄りな気がしました。


馬鹿と紙一重の天才と本物の馬鹿しか生き残れないような世の中を真面目な人が生き抜くのは大変です。

 

藤森さんは元祖リバータリアンでフェミニストらしいので、そのへんも頭の隅に置いておくといいかもしれません。


リバタリアンと聞いて「ゾンビ映画のタイトルみたいだな、そりゃバタリアンか」と思った馬鹿ブス貧乏エリートは私です。


リバタリアニズムとは、自由至上主義。個人の自由を侵害すること以外は自由という思想です。


人助けするかどうかも自由なので、国が税金を使って弱者を救済すべきとも考えない。

 

したがって中絶やLGBTは肯定しても、オバマケアには反対だったりします。

 

「弱者も船に乗せてみんなで溺れようぜ」というリベラリズムとは異なり、弱肉強食のハードボイルドな世界観。生殺与奪の権を他人に握らせてはいけないのです。

 

フェミニストはいまさら説明するまでもないですが、女性の権利を尊重し、性差別をなくそうと考える人たちのことです。


現代女性はフェミニズム運動の恩恵を受けていることを知って先人たちに感謝せよと藤森さんは言っています。


女性の権利だけ主張するうざいフェミニストのせいでフェミニストの評判はすこぶる悪いのですが、本来のフェミニズムは男女平等を目指すものです。


この本にも「とりあえず男性を見たら性犯罪者と思え」などと過激なことが書かれていいますが、一方でえらてんさんの『しょぼ婚のすすめ』が絶賛されていたりします。


本書を企画した出版プロデューサーの尾崎全紀さんはN国の人なのですが、N国の宿敵えらてんさんの本でも忖度せずに推すところはフェアだと思いました。


男性社会の恩恵を受けていない若い世代にはただの男性叩きに見えるのがフェミのめんどうくさいところ。

 

私のように人類と個人という大雑把な括りで考えるような人間がフェミニストについてなんか言うもお門違いな気がするのですが、戦うべきは男性に生まれただだけで偉いと勘違いしているような高齢男性(70歳以上くらいか)、権力者のおっさんと結託して女性差別に加担してきた女性、男児だけを優遇する古い世代の親や教育などであり、若い男性はむしろ馬鹿ブス貧乏側でしょうから生きづらい男性にもおすすめしたい本です。

 

たまにスピってる話やNintendoじゃないほうのDSの話も出てくるので素直すぎる人はリテラシーというものを身に着けてから読んだほうがいいかもしれません。
副島隆彦と聞いて蕁麻疹が出る人は要注意。

 

この本の前書きも長いですが私の前置きもやたら長くなってしまいました。

 

藤森さんは馬鹿ブス貧乏ながら社会で悪戦苦闘してきた女性であり、母親や親戚のおばさん以上に実践的なアドバイスをしてくれる先輩です。

 

ネット用語が飛び交う文章はとても70歳近い人が書いたとは思えない若々しさで、西成の鼻毛のおばちゃん並みにパワフル。

 

内容は青年期(37歳まで)・中年期(65歳まで)・老年期(死ぬまで)の3シーズンに分かれており、それぞれの頭に「苦闘」「過労消耗」「匍匐前進」という、これまた夢のない文字が付いています。

 

青年期はスペックの低さゆえに苦しむことが多いけれど、中年期はハイスペ美女でもつらい時期であるといい、年をとるほど失うものがない馬鹿ブス貧乏のほうが楽になるそうです。ほんとうに身も蓋もないですが希望はある。

 

とくに若さと美しさで評価されてきたことを自分の実力と勘違いしてきた女性にとって、更年期は辛いものになるようです(たとえばゆ◯りぬさんの更年期は壮絶なものになるのかもしれないのですね。しらんけど)。

 

だからといって馬鹿ブス貧乏は身の程をわきまえて大人しく暮らせ、という話にはならない。


人類の女性は生殖能力のあるうちは毎年子供を産んで家事と育児に明け暮れていました。現代人のようにぬるい生活をしているとエネルギーを持て余して無駄に長生きしてしまう。だから老年期に入る前に電池は使い切れ、出し惜しみするな、とすすめておられます。

 

あり余るエネルギーには性欲も含まれています。

 

淑女の皆様におかれましては無縁なことだと思われるかもしれませんが「真面目に生きてきた認知症の高齢女性がイケメン介護士を見て下半身を丸出しにする」という恐ろしいエピソードも出てくるので過信してはいけません。

 

下半身丸出しにしないまでもロマンス詐欺に合わないくらいには発散させておいたほうがいいでしょう。

 

実際の方法についてはぜひ本を読んで各自で考えていただきたいと思います。芸能人の不倫で大騒ぎしてる現状を見るかぎりなかなか受け入れられない提案かもしれないですが、ユニークな考え方です。

 

個人的にこの先、性愛も含めて人間同士の交流はどんどん仮想現実化していくのではないかと思ったりもします。ファンタスティック・プラネットの巨人みたいに乳首を出しながら瞑想に耽る新人類が生まれるかもしれません。

 

全体の感想としては「配られたカードが悪くても、できることはやって、悔いのないように生きよう」という話のように感じられました。それでも駄目だったら仕方がない。たとえ悪あがきでもあがき続けることが大事。

 

読書家の藤森さんおすすめのブックガイドでもあるので、迷うことがあったら読んでみるといいと思います。巻末の紹介文献リストがとても便利。

 

何かにつけて「馬鹿ブス貧乏」と言われるのが辛い場合は、まったく別の方向性の本を併読して中和するといいかもしれません。私はちょうどハイスペ女子の宇野千代の本を読んでいたので、美女も美女で面倒な事が多いと思える冷静さを持って読むことができました。

 

自分視点の話ばかりで申し訳ないですが、最後に面白かったところを引用しておきます。

 

まれに女性が、大抜擢され社長に選ばれたりする。それは、その企業が倒産しかけで、男にとって社長になっても旨味がないときだ。

 

→ドムドムバーガーの社長

 

大学でも、女性が学長に選ばれる場合というのは、女子短大や女子大以外では、その大学内部に大きな問題があり、男はそのような問題解決の責任を負いたくないときだ。状況が良くなれば、また男がしゃしゃり出てくる。

 

→林真理子理事長

 

ほんまや。勉強になりました。