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【感想】東大卒の破天荒なイケメン僧侶『坊主失格』

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小池龍之介さんへのメッセージ

隠居生活の大原扁理さんとの対談で僧侶の小池龍之介さんを知りました。

人間の価値を決めるのに学歴は関係ないと思っていますが、小池さんを語るうえで「東大卒」「イケメン」という情報は外せないのであえてタイトルに入れています。

愛情に飢えていた子ども

『坊主失格』は「妻や母へのDV」「浮気」「恋人の自殺未遂」といったスキャンダラスな面が取り沙汰されることが多いですが、よく自己分析できていると思います。巷で言われているようなトンデモ本ではありませんでした。

小さい頃は担任教師から「ろくでなし」の烙印を押され、十代は太宰治にかぶれて、道化を演じながら腹の中では周囲の人間を嘲笑する屈折した青春時代を送り、大学時代は理論武装して相手をやり込めては喜ぶイヤな奴。結婚すれば相手をいじめ、しまいには暴力までふるうようになり、道ですれ違った人に無意味で馬鹿げた言葉を投げかけ、その反応を見て喜ぶハタ迷惑でおかしな人間――できればお付き合いをご遠慮願いたい人間。それが私でした。

小池さんの問題行動は、乳幼児期に親から適切な愛情を受けられなかったことが原因だと思われます。

ご両親は生まれたばかりの小池さんを置いてよく遊びに出かけてたそうです。金切り声を上げて泣き叫んでいるのを、近所の方があやしてくれていたといいます。

この時「捨てられるかもしれない」という強烈な不安が心に植え付けられたのでしょう。近年、よく聞かれるようになった「愛着障害」です。

友達や恋人に過度の依存してしまうのは、愛されているという実感が欲しいから。暴力をふるって大切な人を苦しめてしまうのも、愛情を試したかったから。つねに自分が愛されているということを確認せずにはいられないのでした。

荒みきった心の拠り所となったのが、お父様から教わった原始仏教の坐禅瞑想法でした。この本には瞑想によって自分をコントロールできるようになったことまでが書かれています。

解脱のため、瞑想修行の旅に出る


1番目:懺悔1(小池龍之介より)


異色のお坊さんとして人気を博していた小池さんは2018年9月、「1年以上7年未満には解脱してみなさんを救うために戻ってくるので待っていてください」と言い残し、放浪の旅に出ます。

財産を処分し、サイトは閉鎖。名前を空朴に改めての出発でした。

ところが、2019年3月、解脱に失敗。1年も経たないうちに旅は中止されました。期間限定でYouTubeチャンネルを開設し、「懺悔」と題した音声ファイルをアップロードされています。

過酷な路上生活をしていくうちに、消滅したと思っていた自分の弱さに直面することになったそうです。浮浪者扱いされれば傷つき、辛いことがあれば泣いちゃう。解脱どころか未熟さを思い知らされたのでした。

解脱失敗について「宗教家が陥りやすい誇大妄想にすぎなかった」と懺悔されています。

仏教では自分が特別な存在であるかのように錯覚することを「魔境」というそうですが、ひとまず自力で魔境から抜け出した強い意志を讃えたいと思います。

還俗し、今後は瞑想指導も本の執筆も辞めてひっそりと瞑想を続けていきたい、とおっしゃっていましたが、生徒さんのため、細々と活動を続けていくことにされたようです。

旅は6月中には打ち止めにして定住し、一ヶ月に一回か二回ていどは、これまで縁のあったかたで、なかなか新しい先生も見つからずにいらっしゃりたいかたには来ていただいて、瞑想など、何かしらを伝えるのは、細々と続けようと決心しました。人数は、少なめがいいですねぇ。門戸は、閉じるのでなくて、半開きという感じでまいりましょう、と思っています。

旅の挫折談と、お詫びとお別れの話会(小池龍之介) - YouTube

 

固定ファンがいるので本の執筆と瞑想指導を続けていれば平穏に暮らせたでしょう。

落ち目になった芸能人ではありませんから、話題作りのために騒動を起こす必要はありません。結果的に無責任なことをしてしまいましたが、人を騙すつもりはなかったのだと思います。

達観しているというより、病んでるように見えるんだが


小池龍之介さん 読者へのメッセージ

著書などでは穏やかに微笑んでいる写真が多いのですが、動画で見るとなんだか儚げで、そのまま消えてしまいそう……。

懺悔のなかで自分の過去世が見えるようになったという話をされていて、かなり危なさを感じました。

罪だとか許されているだとか、何か目に見えないものと交信しているような発言が気になります。うちの祖母もよく「大日如来のお告げが……」と妄想の話をしてくれます。

小池さんの昔の動画もいくつか見たのですが、あまりにも超然とされており、お話についていけなくなることがありました。

「契約書は捨てちゃう」「保険証もいらない」といった非常識なことも言っていて、僧侶である前に人としてどうなんだと思うところも……。

偉い先生じゃないんだよ。ダメな子なんだよ

小池さんはもともと浄土真宗の僧侶でしたが、瞑想に傾倒していることが宗派から問題視され、僧籍を剥奪されています。お釈迦様の教えをベースにしているとはいえ、瞑想は原始仏教のもので浄土真宗の教えにはありません。

檀家からお布施をもらっている身ですから、お坊さんとしての勤めに専念するべきところ、生徒さんを集めて瞑想指導などをしているのです。怪しいと思われても仕方がないのでした。

仏教というカテゴリーにとらわれず、良いものを広めたいという純粋な気持ちだったのでしょうが、こうした活動によって仏教界から孤立してしまったようです。異色というより「異端」「はぐれ者」といったほうが正しいのではないでしょうか。

同業者から認められていない人を「東大卒のイケメン僧侶」として担ぎ上げたメディアもまた無責任としか言いようがありません。解脱しようという小池さんが世俗的な学歴や容姿で評価されていたのですから皮肉なものです。

本物になりたくて、いつの間にか「前人未到の偉業を成し遂げなければいけない」という妄想に取り憑かれていったのかもしれません。

彼に必要なのは救いを求める信者ではなく、「あんた頭おかしいんじゃないの?」と言ってくれる人でした。本当にに救いを求めていたのは小池さんのほうだったのでしょう。

瞑想芸人として転生されてはいかがでしょう

解脱に失敗したショックで「やってくれるぜ、ベイビーちゃん」とつぶやくところにセンスを感じました。

笑いは麻薬だ、現実逃避だと言っておられましたが、「私の人生なんだったんだ……」と絶望するほどアイデンティティをクライシスしちゃった今、必要なのは笑いだと思います。

調子に乗ったら「いまちょっと魔境行ってた」と言えるぐらいタフになっていただきたいものです。

悲しくなったらYouTubeでステハゲさんの動画を見て元気を出してください。彼もまた別の形で人間を超えようとしています。