YouTuberのシバターも絶賛していた『カメラを止めるな!』を見ました。制作費300万円の低予算映画が興行収入30億円に化けた、とんでもないおばけ映画です……いえ、どちらかというとゾンビ映画でしたね。
この映画はネタバレ厳禁なのですが、8日に地上波で放送されたので勝手に「ネタバレ開き」と解釈しております。とはいえ、何を書いてもネタバレになってしまう性質上、これから見る予定の人はブラウザバック、よろしくでーす。
ゾンビ映画としての出来はイマイチ?
前半が37分ノーカットのゾンビ映画(作中作)、後半が映画のメイキングです。
このゾンビ映画がまた、YouTuberが撮影したかのようなショボさではあるのですが、予想以上に退屈だという辛辣な意見が多く、観客のレベル上げも必要なのでは……と思いました。
37分も我慢できない我儘な現代っ子は『パラノーマル・アクティビティ』『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』などの低予算映画を見てメンタルを鍛えてください。それでも余力があるならB級といわず、Z級くらいの映画を見ておくといいでしょう。
ワンカットシーンは前フリ。ストーリーを追うよりも映像に注目です。カメラを止めるべき所でカメラを止めていないのはなぜなのか。
映画では小道具も含めカメラに映っているものはすべて俳優です。具体的には言いませんが、映す意味がないものが映っている、映さなければいけないものが映っていないなんてあり得ないことです。
裏で何が起きていたのか解明されるのが後半部分。ここがこの映画最大のフィーバータイム、観客が一斉に爆笑する見せ場です。
■ゾンビ映画に興味がない人にはどうでもいい話
ゾンビウィルス感染→ゾンビ化、頭部破壊→行動不能、動きノロノロでオツムが動物並み、というゾンビ像を確立したのが『ナイト・オブ・リビングデッド』の監督ジョージ・A・ロメロです。それまでゾンビといえば黒魔術による死者蘇生パターンだけでした。
『ワンカット・オブ・ザ・デッド』もタイトルからしてロメロ・フォロワーのゾンビ映画ですが、ロメロのゾンビ映画に見られる社会風刺などは一切なく、ラストに魔法陣(黒魔術)が出てくる奇天烈な作品でした(魔法陣はクレーンを登場させるための設定でしょうね)。
アホなゾンビ映画はイタリアホラー界の巨匠ルチオ・フルチが撮ったゾンビ映画の傑作(怪作?)『サンゲリア』で既出です。サメとゾンビの水中戦(『ジョーズ』の人気に便乗しただけらしい)は蛇足も甚だしく、トップレス美女のダイビングシーンに至っては監督の趣味としか思えません。
『ワンカット・オブ・ザ・デッド』の荒削りな作風はロメロとフルチ、両巨匠へのリスペクトなのかも……。しかし、ゾンビ映画である必要がないと言われれば御尤もです。カメ止めはゾンビ映画じゃないと上田監督も言ってたし。コメディだし。
SNS戦略がお上手
ネタバレ厳禁の触れ込みが良い宣伝になったようです。内容がわからないまま「おもしろい」という噂だけが広がっていけば、見たくなるのが人間の心理。沖繩の奇祭・アカマタ・クロマタだって見るなというから見たくなるのです。
カメ止めのノリは祭りに近い。劇場で訳のわからない祭りをやってるから覗いてみようの精神で観客が集まったのでしょう。農耕民族に適したマーケティングです。
べつに泣きはしないけれども
驚いたのは「カメ止めを見て泣いた」という人が少なくないことです。たしかにゾンビ映画の皮を被ったヒューマニズム溢れるコメディ映画でしたが、泣けるところなんてあったか? 私がおかしいのか?
どうやら無名な新人たちが努力して面白い映画を作ったこと、その映画愛に感動しているようです。エモい観客の琴線に触れる何かがあるんでしょう。私はそういうノリについていけないので劇場で見なくてよかったです。
さんざんシバターと言っておいてdisるのもなんですが、シバターは上田監督に弱みでも握られているのか、ただの観客になり下がったような感想しか言っていませんでした。もうひと押ししたらシバターも泣きそうです。
私的には冷静なMetくんの意見のほうが参考になりました。
ネタバレ厳禁の話題作?「カメラを止めるな!」を見てきたからレビューするわ
初見の人がリピーターと一緒に見ると、ネタバレしなくても笑いが起こっている場所がネタバレになって興ざめ……ということがあるようです。それも社会現象になるほどの人気映画である証なのでしょうね。