ついにこの話をする時が来た。
生涯忘れることはないだろう、あの人のこと。
――神様。
私の人生は神様と出会う前と出会った後で大きく変わりました。親友と呼べる初めての人でした。岩井志麻子にとってのシベ超のようなもの、と言っておきましょう。
神様と出会ったのは、私が当時入り浸っていたゲーム。
なぜ「神様」なのかというと、本人がそう言っていたからです。
「この世界を作ったのが誰か知っていますか? 私ですよ」
と、彼は曇りのない目で言い放ちます。
冗談ではなく真実なのです。
統合失調症で、精神障害1級の神様にとっては。
ガチのひきこもりと、1級の精神障害者。
じつに濃ゆい組み合わせです。
神様はゲーム内でも異彩を放っていました。掲示板の書き込みを見ただけで「この人、やばい」という匂いがプンプンするほど意味不明。その反面、お人好しなところがあって、アイテムを騙し取られそうになることもよくありました。
そんな神様が心配になり、私から話しかけたのです。
ヘタレのくせに、人がいじめられたり、騙されたり、仲間外れにされたりしているのを見ると放っておけないところがあるもので (^_^;)
仲良くなってからはスカイプで話をしました。神様はカメラを設置しているので御姿を見ることもできました。
体重はおよそ100キロ。色白で髪はものすごい天パー。本人曰く、伸ばし続けるとアフロになるらしいです。
昔は痩せていましたが、精神薬の影響で太ってしまったそうです。自宅の便座を2回壊し、便座の耐荷重は100キロ前後だと分かったのだとか。
一年中黒いTシャツと黒い短パンというファッション。神様はこのコーデを「ブラックフォーマル」と呼び、買い物から葬式までどこにでも行きます。
考え事をする時に舌を出す癖があり、「ペコちゃんみたいだって言われる」と話していましたが、友人からは『弱虫ペダル』の御堂筋くんに似ていると指摘されていました。
お相撲さんのような体型で天パーの御堂筋くんを想像してもらえば間違いありません。
100人に1人はいるという統合失調症ですが、メディアで取り上げられることがほとんどない病気です。
私は『ブラックジャックによろしく』や「ビューティフル・マインド」でこの病気を知ってはいましたが、本物はそんな甘いものではありませんでした。
ちょっと社会のレールから外れた程度の人間が「ぶっ飛んでいる」と言われていると、私は笑ってしまいます。本当にぶっ飛んでいるというのは神様みたいな人のことです。
仲良くなっても決して油断はできません。神様の調子が悪くなると、よく北朝鮮のスパイだと疑われたものです。
神様はよく私にクイズを出しました。
いつだったか、
「今日は良いことがあったんだよ、何だと思う?」
と聞かれたので、
「ガチャでレアなアイテムでも出たの?」
と答えたら、
「ブー、違います。
わしは、ついに大日如来になったよ」
ものすごい報告をしてくれました。
そんなんわかるかい!
だいたいこんな感じで、会話は噛み合いません。
そんな神様が、ある時私にこう言いました。
私は突然のことにびっくりして、「あ、そうなんだ」みたいな返事をしてしまったと思います。
でも、後で気がつきました。
これは神様にとって、仲良しの印なんだってこと。
大日如来(自分)の仲間だと認めてあげるということ。
一見支離滅裂なのですが、神様と話していると少しずつわかってきます。
だから、私がこの記事で大日如来の弟子だと名乗ったのは嘘ではないのです。
神様がそう言ったからです(うちのブログ、意外と伏線張ってあるのよね)。
調子が悪い時、神様は「魔王が来る」と怯えました。
それは突然やって来る幻聴のことです。神様は幻覚がはっきり見えるし、幻聴もかなり酷い。私が戦っている怪物より遥かに大きいものと戦っていました。
神様は自分が幽閉されたお姫様で、私が勇者なのだという話をよくしました。魔王を倒してほしいと私に言うのです。
このブログは「ひきこもりクエスト」になったのも、私が勇者と名乗っていることも偶然ではないのですよ。
神様は病気と戦いながら、最愛のおじいちゃんの介護をしていました。
お使いからトイレの介助まで、何でもこなします。どこの家庭にもいろいろ事情があるでしょうが、神様の家もちょっと複雑。おじいちゃんとは仲良し。でも両親とは……です。
神様は良くも悪くも正直でピュア。
正直すぎて、顔写真を公開しているゲーム仲間に対し、「あなた、わしが持っているDVDに出ていたセクシー女優に似ている」と言って激怒させたことがあるそうですが、悪気はありません。
ただ、思ったことをすぐに口に出すので喧嘩になります。家族を除けば、私が本気で喧嘩したのは神様くらいです。
どんなに激しく喧嘩しても、翌日には何事もなかったかのように人懐っこく話しかけてくるから、怒るのが馬鹿馬鹿しくなってきます。
なぜか憎めない不思議なキャラです。
そんな神様がめちゃくちゃブチ切れたことがありました。
大切にしているクマのぬいぐるみの「ポン太くん」を親が捨ててしまった時のことです。
ポン太くんがいなくなったことを知った神様は、猛然と両親の元へ向かい、ポン太くんの居場所を問いただしました。
「クマのぬいぐるみなら、汚いから捨てた」
その言葉に、神様大激怒。
「クマのぬいぐるみじゃない、ポン太くんだ!!!」
とシャウトしたのです。
それを聞いてはじめて、父親はことの重大さに気づいたようです。
名前を付けるほど大切にしていたのか、と。
この時、神様はすでに30代半ば。まさかぬいぐるみを宝物にしているとは思わなかったでしょう。
しかし、ポン太くんはただのぬいぐるみではありません。子供の頃、大好きなおじいちゃんに買ってもらった特別なぬいぐるみです。
神様はいつも、私の予想を上回る存在でした。ピュアだったり破天荒だったり意外とインテリだったりで、一緒にいるとジェットコースターに乗っているようでした。
過去は美化されるというけれど、神様のエピソードも悪いことより良いことのほうが浮かんできます。
共依存状態になり、結局離れるしかなくなったけれど、神様との出会いも私が書き残しておきたい事の一つです。
神様の文章は天才的すぎて面白さの半分も伝わらないだろうから、私が書くしかないんです。
まだまだ神様の面白い話はありますが、それはまた次の機会に。