成宮アイコさんは私と同じ新潟県出身。
機能不全家族で育ち、社会不安障害・適応障害を抱えながら、「生きづらさと人間賛歌」をテーマにした詩の朗読ライブを行っています。
フジテレビの「スーパーニュース」やNHKの「福祉ネットワーク」で紹介されたこともあるそうです。
19歳から新潟の心身障害者パフォーマンス集団「こわれものの祭典」で活動しているそうだが、ひきこもりでテレビを全然見ない私は、アイコさんみたいな人がいることも、そんなグループがあることも知りませんでした。
みんなと同じになれない苦しみ
成宮アイコ 朗読「傷つかない人間なんていると思うなよ」2016.05.14 カウンター達の朗読会vol.10
「あいつの声、ぶりっこだよね」そう言われている声が聞こえてから、人と話せなくなった。
子どものころから家庭内暴力を受けてきたアイコさんは、極度の人見知りで学校でも浮いた存在になってしまいます。
〈みんなと同じ〉になりたくてギャルになったり、バンギャになったりしてみますが、無理をしてもうまくいかない。
同世代の女の子に会わないように逃げ込んだイトーヨーカドーのベンチだけが、唯一の心の拠り所でした。
やるせない気持ちを何種類にも分けた日記に書き、心にたまった感情を吐き出す日々。
専門学校性になったアイコさんはフリーペーパーを作り、詩の展示をはじめます。
月乃光司さんとの出会い
月乃光司&成宮アイコ「人生なんでもあり」(コラボバージョン)
展示をはじめたころ、朗読イベントに誘われて「こわれ者の祭典」代表の月乃光司さんと出会います。
人が大勢集まる場所はこわかったのだが、吸い寄せられるようにイベント会場に向かった。
例の精神障害化に入院していたという男性は、入院当時に着ていたという赤いチェックのパジャマを衣装にして、「アルコール依存症になって良かった! 酒税をたくさん払って社会に貢献できた! 何が何でも自己肯定だ!」と無茶苦茶なことを全力で叫んでいた。
この時、はじめて本気の大人を見たような気がしたそうです。
「こわれ者の祭典」に加入してからも、数年はステージの上にぬいぐるみを置いて、舞台袖で詩を朗読していました。
自己肯定感が低いと、客観的に見て綺麗とか汚いとか以前に「自分の姿が他人に不快感を与えるんじゃないか」という恐怖があります。
その恐怖を克服して舞台に立っているアイコさんはすごい。
「怒りがあると広く届かない」から、あえて怒りを表に出さないとか、「地元大好きなマイルドヤンキーになりたい」のに、自分に似合う少女っぽい服装を選ぶとか、朗読詩人・成宮アイコを客観視できているところも、多くのファンに支持される理由だと思います。
救われたのは結局、あれほど探してきた「こうしたら成功する」「こうすればうまく生きられる」という方法ではなく、「その気持ちわかるわ」と笑われたとき、「自分はこんな風にだめだったから、あなたのだめもそれでかまわない」という何も解決しない方法だった。
わたしが受け取ったバトンは進む方向を示してくれたのではなく、「そのままでも、まあいいんじゃない?」という肯定にすらならないような許容だった。
それでいいよね。
生きているだけでみんな偉い。