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【感想】時代劇の越後屋は悪くない!『かつて誰も調べなかった100の謎』

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 いまでは不倫ばっかり報道している『週刊文春』に、1995年から2011年まで「ホリイのずんずん調査」という伝説の連載がありました。

ライター/コラムニストの堀井憲一郎さんが関心を持ったことを調査するのですが、驚くのは、それがどんなにくだらないことであっても、すべて人力で調べることです。

知ったところで我々の生活には何の役にも立ちません。しかし、そこに手間とお金をかけるのがロマンというものですよ。

本書は100のずんずん調査を収録した選集。雑学好き・やってみた系動画好き・データ収集が好きな人におすすめです。

 日本人はいつから寿司を「1カン」と数えるようになったのか

かつての日本では、寿司を「1カン、2カン」という怪しい助動詞で数えることはなかった。昭和の時代には一般人は口にしていなかった。寿司は1つ2つ、1ヶ、2ヶと数えていた。

怪しく不思議な寿司の助動詞“カン”は90年代前半にどこからともなく湧いてきて、90年代後半に広まり、2000年代に定着した。いまや「昔からカンって言ってたよね」という空気になっている。

 カンが使われ始めたころの雑誌では、昔のにぎりの大きさが通貨の1貫(銭を携帯するために束ねたもの)と同じくらいだったから、などと書かれていますが根拠なし。

1貫は通貨の単位だけでなく、重さの単位でもあります。ネットでは寿司の重さが1貫だから、と説明している記事もありました。カンの由来なのに一貫性がない!

サッカーのFKで股間を守る国はどこ?

FK(フリーキック)とは、サッカーの試合で反則があった時に与えられるペナルティの一つ。

  • 反則を受けた側⇒相手の妨害を受けずにボールを蹴って試合を再開することができる。
  • 反則した側⇒ゴールの前に立って壁を作る。

スポーツにまったく興味がない私でも知っているほど、よく見る光景です。無防備な状態でボールを受け止めるわけですから、股間を守るかどうかの判断は重要です。

予選リーグ48試合中、43試合で検分したところ、アメリカが世界で最も股間を大事にしている国だったのだ。

アメリカのチームはゴールを守る前に股間を守っていました。

そういえば、アメリカは野球とアメフトが人気でサッカー熱は低めですね。一方、サッカー人気の高いイタリアは股間を守らないそうです。だからどうってこともないんですが。

 悪徳商人は越後屋ではない

越後屋は悪くない。

あらためてわかった。

時代劇には悪い武士と悪い商人がセットになって出てくることが多いが、そこには越後屋は出てこないのである。あの、お代官さまのセリフ「おぬしもワルよのお」に続くのは「越後屋」ではないのだ。

 悪徳商人として最も登場頻度が高いのが西海屋、次が港屋でした。どうも海周りの名前はよくないみたいです。

黄門様が庶民のふりをする時に「越後の縮緬問屋の隠居で」と言うセリフが混同されちゃった説が有力です。

新潟県民の私は「越後屋、おぬしも悪よのお」というフレーズが出てくるたびになんとも言えない気持ちになっていました。そうか、悪いのは越後屋ではなかったんだな……。

1000時間かけて各局のアナウンサーが映っている時間を調査

アルバイトの総稼働時間が1000時間を超えたという恐ろしい回です。この調査のために6人が同時にビデオをチェックできる設備まで作ったそうです。

いまだったらクラドソーシングを使って人件費をカットすることもできるかもしれませんが、そんなものはない時代。このネタだけで三桁超えてますね。

この連載を始めるおりに、調査にかかる経費を週刊文春に出してもらうという約束になっていたのだけれど、掛けたら掛けたでそのぶんを出してもらうという青天井な調査は、これが最後になった。

うん、そりゃそうだ。昔の文春は太っ腹です。ここまでお金をかけて、各局の看板アナウンサーが誰だかわかりました、というオチ。贅沢すぎる。

ミステリー本が重くなった理由

80年代には、500g以上の本はほとんどなかった。

83年から89年mなでの7年間で2冊だけなんだよん。少ないねえ。それが90年代には50冊と大幅殖である。

500gてのは、300ページくらいの文庫本3冊ほどの重さになる。おいらはこの「500g」が片手でしばらく持てる限度だと思う。とりあえずホリイリミットと名付けておきます。おお。かっこいいな。

 手書き原稿からワープロに変わったことで、本が分厚くなったのではないかと推理する堀井氏。

すっかり忘れていましたが、昔はライターも小説家も手書きだったんですよね。ただし、生産性が上がったからといって質が良くなわけじゃない。

その分水嶺が500gなんでしょう。

ちなみにこの本の重さは490gでした。ホリイリミットを遵守している。えらい。

雑誌が輝いていた時代の遺産

この本の何が面白いって、堀井さんの着眼点が面白いわけです。文章力はどうにかなっても、ネタ出しはセンスがないと無理です。

「星一徹がちゃぶ台をひっくり返したことは一度もない」はよかったなー。あれって約束を守らなかった飛雄馬を殴った時に、食卓が動いただけなんですよね。そもそもちゃぶ台ですらないし。

星一徹は物に八つ当たりするような女々しい男ではないんです。ちゃぶ台をひっくり返していたのは寺内貫太郎なのでお間違えなく。

『巨人の星』の頃の日本には美学がありました。ずんずん調査はくだらないことをやっているようで、けっこう大事なことも教えてくれます。

巻末にアルバイトの名前が載っていてジーンとしました。みんなで作ってる感があって微笑ましい。