漢 a.k.a. GAMIさんの自伝『ヒップホップ・ドリーム』を読んでみました。
YouTubeの影響力は凄いね。ヒップホップに1ミリも興味がなかった私が漢さんを知るきっかけになりました。
いつものようにYoutubeを流し見ていたら、おすすめの動画に苦虫を噛み潰したような顔のおっさんのサムネが出てきました。それが漢 a.k.a. GAMIというラッパー。そこで、どうやらYouTuberのシバターさんと揉めているらしいことを知る。
ググッてみると、ヒップホップ界では知らない者がいない有名人だというじゃありませんか。でも私は漢さんが出演している「フリースタイルダンジョン」という番組を一度も見たことない。ここ最近のヒップホップブームも全然知らない。
私の中で日本のラップは「DA.YO.NE」止まり。ライムスターの宇多丸さんは映画評論、ZEEBRA先生は「東京生まれヒップホップ育ち」の人。海外のラッパーでさえ知っているのは2pacとEMINEMくらいでした。そんな状態の人の感想なんで、ヘッズの皆さんはゆる~く聞いてください。
ヒップホップとは人生そのものである
『ヒップホップ・ドリーム』を読んで日本のヒップホップの印象が変わりました。どうやら日本語ラップ=ダサいという認識を改めなければならない時が来たようです。
かつてロックが持っていた反体制、反権力の精神を持っている音楽がヒップホップだからです。
今じゃ半端なロックバンドよりヒップホップのほうが「ロック」してるという話なんですよ。ロックファンとしては複雑ですが、アメリカかぶれのチャラチャラした音楽ではないということがよく分かりました。
攻めてるロックバンドなんて「神聖かまってちゃん」くらい。だけどの子さんだってもう30過ぎの立派なおっさん。だいぶ大人しくなりました。
マリリン・マンソンが「Rock Is Dead」を発表したのが1998年。世界的に見てもロックはオワコンみたいです。思えば、歴史を変えるようなロック・スターは昔の人ばかりだ。
私はロックが好きなので認めたくないけど、アーティストもファンも高齢化しているのは事実です。
それに比べてヒップホップの若手は熱い。現時点で最も尖っている音楽がヒップホップであることは間違いないでしょう。
日本のラッパーで一番有名なのはZEEBRA先生ですが、漢さんも現在のヒップホップブームに大きく貢献していました。
自伝には、漢さんの生い立ちからヒップホップとの出会い、スターダムに駆け上がるまでの様々なエピソードとともに、ラップ哲学が書かれています。
漢 a.k.a. GAMIの功績
漢さんは、アメリカの真似事だった日本のヒップホップに血肉を与えた本物のギャングスタ・ラッパーです。
犯罪や暴力を匂わせるリリックはすべて「リアル」に基いているというから恐ろしい。(リアルを追求するあまり、「刺す」と言ったら本当に刺してしまうので、YouTubeのバトルでもシバターさんが刺されるのではないかと心配したキッズがいた模様。)
得意なのは即興でラップをするフリースタイルです。全盛期は過ぎたなんて言われていますが、ヒップホップ業界では絶大な影響力があります。
時代遅れのMCバトルの大会を変えたのも漢さんと仲間たちでした。それまでの大会ではジャッジを巡って小競り合いが絶えませんでしたが、漢さんらがルールを変更し、参加者目線のイベントに変えていったそうです。現在のように誰もが参加できる開けた大会になったのは、漢さんたちのおかげなんですね。
本には「チョコレート」や「観葉植物」という隠語でストリート・ビジネスのことも書かれていましたが、そこは深く追求しないでおきましょう。(偉人扱いのスティーブ・ジョブズだって犯罪でメイクマネーしてたもんね。)
ワルではあるけど、信念を持って生きている人。
パワハラと不正が横行していた悪徳レコード会社と決別し、自身のレーベル(鎖グループ)を立ち上げたのは、アーティストたちへの待遇を改善するためでした。
これを白か黒かでジャッジするのはナンセンス。まあ、善悪二元論には収まらない器ってことです。
ヒップホップをエンターテインメントに
漢さんの願いは、ヒップホップをお笑いや格闘技に負けないエンターテインメントにすること。
フリースタイルダンジョンは人気ですが、ラッパーだけで生計を立てられるアーティストはほとんど居ないのが現状のようです。
ただでさえCDは売れない時代。私のようにヒップホップを知らない人の目にも留まるように、漢さんは音楽以外の活動にも力を入れているんでしょうね。
YouTubeでは叩かれすぎてちょっと可哀想でしたが(不良やアウトローを見ただけで拒絶反応を起こすネット民も多い。)
私は相手が不良でも気にしないけどね。この社会ではひきこもりも不良も同じはみ出し者。生き辛いのはお互い様だから。
色んなタイプの人がいたほうがネットは面白くなると思う。とりあえず、陰キャラと意識高い系は見飽きた。
ただ、カリスマ性が高いアーティストだけに、コミカルな路線に走ると離れていくファンもいるでしょうね。本場アメリカじゃギャングスタ・ラッパーのスヌープ・ドッグが料理番組をやってるくらいだから、気にすることないと思うけど。
漢さんの記事を書くために、曲をいくつか聴いてみました。
YouTuberの漢さんは、まだ初々しい感じだけど、ラッパーのMC漢はクールだね。
マイクを持って立っているだけで無双感がある。でも強さだけじゃなくて哀愁が漂っている時もあって渋い。男にモテるタイプだね(変な意味じゃなくて。)
「何食わぬ顔してならず者」
いい曲でした。
単純で馬鹿という不良のイメージが覆ったよ。